(前回からの続き)
トニー・シェイたちが1996年に立ち上げたリンク・エクスチェンジは2年後、マイクロソフトによって2.65億ドルで買収された。
その後はアルフレッド・リンとともに「ベンチャー・フロッグス」として新規ベンチャーへの投資を始める。その中で巡り合ったのが、靴ECサイト「シューサイト・ドットコム」である。
創業者のニック・スインマーンは数年前に大学を出たばかり。彼のアピールはシンプルだった。
米国の靴市場が400億ドル産業で、そのうちカタログ通販が20億ドルを占めること。ネット通販は成長が期待できること。人が靴を履かなくなる可能性が低いこと。
ニックは自身の体験から「ベイエリアで靴を買うのが大変ならば、他の地域に住む人はもっと大変だろう」と仮説を立てた。近所の靴屋で写真をとってwebサイトに載せると、実際に靴が売れ始めた。
トニー・シェイは「靴業界の経験者を見つけたら、また連絡してくれ」と言い、サービス名も少しマシなものを考えた方がいいと伝えた。
しばらくしてニックは、百貨店ノードストロームの紳士靴部門で働いていたフレッドを見つけた。フレッドは、ニックが知人を超える出資ラウンドをまとめた場合のみ、入社に関心があると言う。
こうして次のミーティングが設けられ、社名についても「ザポス(Zapos)」という名前が提案された。スペイン語の「ザパトス(zapatos)=靴」からとった言葉だ。
トニー・シェイは間違って発音されないよう、「Zappos」がいいんじゃないかと提案。こうしてザッポスが生まれた。
出資は成立したが、トニー・シェイとアルフレッド・リンは他の案件でも忙しく、初めの頃はザッポスに深く関わることがなかった。27件の投資先の1つでしかなかったのだ。
しかし、投資家が忙しいのは出資する時だけ。徐々に時間を持て余すようになったトニーは、挑戦のしがいがある他のことを見つけたいと思った。
こうして彼が次にのめり込んだのは、ポーカーである。1999年のことだ。