(前回の続き)
1999年に創業したザッポスは、当初ドロップシッピングモデルだけで事業を展開していた。しかし、それでは人気の売れ行き商品を揃えられず、途中で仕入れ直販モデルを開始。売上が急成長し始める。
2002年には売上3,200万ドル近くに拡大。2010年には10億ドルを目指すという野心的な目標も掲げ、カスタマーサービスを重視する企業としての価値観もクリアになった。
ところが、まだまだ課題は山積みだった。中でも大きかったのが、資金繰りの問題である。
ザッポスがドロップシッピングモデルで創業したのは、在庫を抱えないので資金繰りを気にしなくてよいからだ。当時このモデルは売上の25%ほどを占め、貴重な収益源になっていた。
その反面、カスタマー・サービスでは課題もあった。メーカー側はザッポスほど迅速にも正確にも対応してくれない。当時、ブランドにとってはサイドビジネスのようなものだったのだろう。
収益性は良くても、これによってザッポスに失望してしまう顧客もいる。これはザッポスにとって、大きなトレードオフである。
成長するほど、ドロップシッピングを止めるのが難しいのも分かっていた。そこで2003年3月、ザッポスはドロップシッピングをやめた。短期的にはキャッシュフローの問題をさらに大きくすることになる。
しかし幸運なことに、今度は銀行に相手をしてもらえた。ウェルス・ファーゴから融資判断が下りるまでの間、一部の取引先に支払いを待ってもらうよう心を砕いた。
ウェルス・ファーゴ側は、それまで赤字のインターネット企業に資金を融資したことがなかったため、社内でかなり議論が行われていた。フレッドとトニーは毎月、どの取引先の支払いを優先させるかに頭を悩ませていた。