今回特集するのは、2020年最も輝いた企業の一つである「DoorDash」の歴史である。
DoorDashは米国のフードデリバリーサービスで、比較的後発にも関わらず米国市場でトップの地位を確立した。
参考:ついにDoorDash上場へ!熾烈な競争市場を勝ち抜いた最大の要因は何か
DoorDashについては上場時の記事でも取り扱ったが、今回のシリーズではより詳細に、創業から成長までの出来事についてストーリー化する。
現代を生きるビジネスパーソンにとって、DoorDashから学ぶべき点は多い。起業家であれば、彼らがどんなアプローチで事業を開始したかを注視してほしい。競争の激しい市場で成長した戦略は、より多くの人にとって参考になるはずだ。
創業者のトニー・シュー(Tony Xu)は中国生まれ。米国の大学院で学ぶ父親に連れられ、4歳のときに渡米する。
母親は中国で医師をしていたが、アメリカで中国の医師免許は使えない。彼女はレストランで働くことになり、後にトニーも皿洗いなどの仕事を手伝う。
幼いトニーにとって、学校生活は大変だった。英語を話せないので、テレビを見て学んだ。学校の先生やクラスメートが自分の名前「Xu Xun」を正しく発音できないことにも気がつく。
そこで彼は、流行っていたコメディ番組「Who’s The Boss?」の俳優、Tony Danzaにちなんで「トニー」と呼んでもらうことにする。実際に、法的な名前も変えたらしい。
この時のトニーはまだ5歳だが、起業家として重要な素養の一つを身に付けたと言える。一見変えることが難しいこと(名前)であっても、その気になれば変えられるのである。
初めの頃、シュウ一家が住んでいたのは米国イリノイ州シャンペーン。当時は人種の多様性は皆無で、アジア系はほとんど住んでいなかったそうだ。
トニーが15歳のとき、家族はカリフォルニア州サンノゼに移り住む。きっかけは父親が「中年の危機」に直面したこと。彼は突如としてアカデミアを捨て、インテルに就職する。
サンノゼには当時から多くのアジア系が住んでいた。トニーにとって「ほぼ中国に戻ったようなものだった」などとジョークを言っている。
引っ越した頃、トニーは「勉強が2年遅れている」などと言われる。ベイエリアでの教育レベルが相対的に高かったわけだが、惨めに感じた彼は猛勉強を開始。卒業する頃には成績優秀になった。
大学はUCバークレーに進み、産業工学を専攻。その後はマッキンゼーを経て、スタンフォードのビジネススクールに進学する。
そこで出された課題の中に「自分が熱意を持てることを見つけ、いろいろなことに挑戦する」という内容のものがあった。
トニーにとって、それは「(母親のような)ローカルビジネスを応援すること」だった。同じクラスにいた仲間とも同じ志で引き合う。そうして巡り合ったのが、DoorDashの創業メンバーである。