Grouponは世界中のローカルビジネスのためのオンライン・マーケットプレイスを提供する会社で、主に割引クーポンやグッズ販売によってローカルビジネスと一般消費者をつなぐ役割を果たしている。
損益推移を見ると、売上高は30億ドル規模に伸びている。成長率は年々鈍化しており、利益率は高くない(基本赤字)。2011年以前はずっと赤字だったようなので、一貫してこういう状態のようだ。
とはいえ、グローバルにインターネット事業を行い、3000億円規模の売上高があるというのは決して小さくはない。売上高だけで見たら、Twitter(2015年度で22億ドル)よりも大きいわけだ。
ということで、どんな事業を行なっているのかも見てみよう。
Grouponは「ローカル企業のためのマーケットプレイス」という点を強調している通り、地元の中小企業を対象としたサービスを提供している。「消費者たちがお出かけするときに真っ先にチェックするサイトにしたい」とのこと。
具体的には、「Things To Do」「Beauty&Spas」「Food&Drink」などのカテゴリごとにスモールビジネスについての情報をまとめ、彼らの店舗が提供するグッズやサービスを購入することができる、というのが主な内容。
イメージ的にはホットペッパーやぐるなびのようにも思えるが、Grouponの場合は実際にサイト上で何かを「買う」というプロセスが存在するところが異なる。彼らはクーポンを販売しているのだ。
Grouponの事業は地域によって大きく北米、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、その他の3セグメントに分かれる。また、提供するグッズやサービスのカテゴリーも「Local Deals("Local")」「Groupon Goods("Goods")」「Groupon Getaways("Travel")」の大きく3つにわかれる。
2つの軸(地域とカテゴリー)で売上高を分けた表を見つけた。
地域セグメントごとの売上高推移をグラフにすると、以下のようになる。
North America以外(EMEAとRest of World)で特に売上高が伸び悩んでいるようだ。
続いて、カテゴリー別の売上高推移。
Goodsは増加傾向、そのほかは減少傾向にある。Goodsカテゴリは、ローカルビジネスが提供する商品を遠くから買うことができる、というだけなので正直、通常のECプラットフォーム(Amazonや楽天)などと同じように見える。
Travelカテゴリではホテルや航空券、ローカルビジネス(サロンなど)のサービスを全て含んだパッケージを売る、という内容だが、伸び悩んでいるようだ。聞いた感じだとすごくニーズあって良さそうな気がするんだけどな。ExpediaやTripAdvisorなど、他の企業が提供するサービスと潰し合いになっているのかもしれない。
Localカテゴリは、ローカルビジネスが提供するクーポンを買って、実際に現地に行ってそのサービスを(多くは格安で)受けることができる、というものでGrouponのコアビジネスといっても良さそうだが、伸び悩んでおり、3カテゴリの中でも最小になってしまっている。
ここまで見た感じだと、Grouponの先行きは若干厳しそうに思える。理由は次の3つ。
まず一つ目は、彼らにはグローバルでのネットワーク効果が働きにくいのではないかという点。日本にはホットペッパーやぐるなびがあるように、ローカルビジネスとの接点という意味ではやはり現地企業の方が強いだろう。そこを世界で越えられるという気は正直しない。
二つ目は、2つのカテゴリ(GoodsとTravel)が他のジャンルの企業と潰し合いになる、という理由。Goods販売はどうしたってAmazonやeBayなどの方がECに特化しているために有利に思えるし、極端な話自分でECサイトを作ったっていい時代だ。Grouponにしか売れない客がいなければ伸ばし続けることはできないだろう。Travelも前述のように、旅行に特化したサービスにはかなわないと思う。
三つ目は、彼らにとってコアビジネスともいうべきLocalカテゴリー、ローカルビジネスのクーポン販売が伸び悩んでる点だ。結果論になってしまうが、戦略的に不味さがあるんじゃないか、と思ってしまう。本来ならそこに資源を集中して、他には出せない価値を出しているのが理想の状態だったんじゃないか。結果としてグッズや旅行プランの販売、という他にもっとすごいサービスがある領域に踏み込み、どれも中途半端に終わってしまっているという印象。