街コン専用の情報ポータル、街コンジャパンで有名な「リンクバル」についてまとめていきたいと思います。
創業者の吉弘和正氏は1970年生まれ、群馬県の出身。
高校卒業直前に父が経営していた会社が倒産し、一度は大学進学を諦めて会計事務所で働いています。
20代前半でカリフォルニア大学サンタバーバラ校に進学。
吉弘和正氏が渡米した理由は2つあります。
アメリカの流行が遅れて日本に来ることと、海外に渡る人が少なかった当時に英語の習得で差別化をはかることです。
在学中は学費と生活費を稼ぐために、個人事業主として古着ビジネスと業務委託の仕事をしていました。
業務委託は会計事務所の顧問先だった不動産会社から請け負っていました。
卒業後は不動産投資、プライベートエクイティー業界を経て、オックスフォード大学でMBAを取得。
2008年にハミルトンレーン社の日本オフィス設立と事業の立ち上げを行なっています。
リンクバルの始まり
海外生活が長かった吉弘和正氏は東京でネットワークを作るために様々なイベントやパーティに参加。
日本では海外で経験したホスピタリティを感じられなかったため、趣味の一環として自分でパーティーを開催するようになりました。
2011年3月の東日本大震災で日本の多くのイベントは自粛となっていました。
「自分でも何かできることはないか」と思っていたところ、地方で食べ歩きしながら交流するイベントの存在を知りました。
このイベントを全国に広めれば日本が元気になると考え、名称を「街コン」に統一して「街コンジャパン」を2011年6月に立ち上げました。
2011年9月には「街バルジャパン」の運営を開始し、12月に「(株)リンクバル」を設立しました。
2013年には恋を学ぶサイト「恋学」、 結婚相談所の比較及び資料一括請求サイト「婚活ジャパン」を運営開始。
2015年4月、設立から3年4ヶ月でマザーズに上場しました。
それでは、リンクバルの業績推移を見てみましょう。
2017/9期からの5年で、売上高は2億5736万円から26億5281万円、経常利益は1270万円から4億9406万円に増加。
5年間で売上高は10.3倍、経常利益は38.9倍になっています。
今回のエントリでは、「街コン」というビジネスで急成長をとげたリンクバルとは一体どんな会社なのかを見ていきたいと思います。
リンクバルが展開するサービスは「イベントECサイト運営」、「WEBサイト運営」の2つに分かれています。
①イベントECサイト運営サービス
一つ目は、街コン(街バル)イベントを掲載して一般参加者を募るという「イベントECサイト運営サービス」です。
イベントECサイト事業の収入は、自社イベントによる収入、他者イベントの手数料、企業の広告収入・イベント収入の4つ。
リンクバルは、「街コンジャパン」「街バルジャパン」という二つのサービスを展開しています。
(街コンジャパン)
街コンジャパンには私も一度お世話になったことがありますが、開催地・開催日・ジャンルなどから街コンを探して参加登録ができます。
「初心者におすすめ」「一人参加OK」などの条件をもとに検索することが可能。
街コンはごく普通のものから、謎解きコンや球技大会コンなど様々な種類があります。
街コンジャパンのイベント掲載数を見てみましょう。
2016/9期では45,399件でしたが、2017/9期は96,962件と倍近くに増えています。
年間の掲載数が96,962件ということは、1日あたり265件掲載されていることになります。
会員数は73万人(2016年9月)から106万人(2017年9月時点)に増加しています。
続いて、街バルジャパンです。
(街バルジャパン)
街バルとは食べ歩き飲み歩きして様々な飲食店を楽しむ大規模なグルメイベントのことです。
街バルジャパンでは開催地・開催日で検索して参加申し込みができます。
②WEBサイト運営サービス
恋愛や恋活・婚活に関するWEBサービスを運営しています。
WEBサイト事業の収入は、広告収入、有料会員からの会費、掲載企業からの手数料となっています。
「恋学」、「カップリンク」、「婚活ジャパン」がこのサービスになります。
恋学は恋に悩む大人の女性を応援するための情報サイト。
(恋学)
カップリンクはオンラインで恋活・婚活ができる会員制マッチングサービスとなっています。
また、恋活・婚活イベントで利用でき、同じイベントに参加した人はカップリンクを通じて無料でメッセージを送ることができます。
婚活ジャパンは婚活相談所の比較サービスです。
結婚相談所ごとに入会資格、コースと料金などを比較することができ、自分にあった婚活相談所を見つけることができるようになっています。
(婚活ジャパン)
それでは、サービスごとの売上を見てみましょう。
2017/9期においてイベントECサイト運営サービス25億3391万円、WEBサイト運営サービス1億1889万円となっています。
売上高のほとんどがイベントECサイト運営サービスであることがわかります。
また、イベントECサイト運営サービスの売上高は17億105万円(2015/9期)から25億3391万円(2017/9期)まで増加。
イベントECサイトの売上高の内訳について見てみたいと思います。
リンクバル主催の街コンイベントは11億832万円(2015/9期)から13億7389万円(2016/9期)まで増加。
しかし、2017/9期では13億1063万円とわずかに減少しています。
他社主催の街コンイベントは5億4223万円(2015/9期)から11億5529万円(2017/9期)と増加しています。
街バルイベントも5049万円(2015/9期)から6798万円(2017/9期)と増加。
イベントECサイト運営サービスの売上はほとんど街コンイベントによるものだとわかりました。
街コンの年間掲載数が96,962件で、25億円の売上(2017/9期)なので、街コン一回あたりざっくり25,783円の収益をもたらす計算になります。
前年(2016/9期)は45,399件で20億円の売上だったので、一回あたりは44,053円。
掲載回数が増えているわりには、収益が伸びていないということも分かります。
財務状況を確認するためにバランスシートを見ていきたいと思います。
2017年9月末時点での総資産は18億3073万円あり、そのうち現預金は14億2287万円。
とてもキャッシュリッチです。
資産の源泉となっている、負債・純資産の内訳も見てみましょう。
2017年9月末時点において、利益剰余金8億799万円、資本金と資本剰余金の合計は5億5700万円。
自己資本比率は66.5%となっています。
キャッシュフローについても見てみましょう。
2017/9期において、営業キャッシュフロー4億3379万円、投資キャッシュフローが555万円、財務キャッシュフローはマイナス1億4398万円となっています。
2015/9期で、投資キャッシュフローマイナス1億3008万円、財務キャッシュフロー5億4405万円となっているので詳細を見てみましょう。
有形固定資産取得による支出と敷金及び保証金の差入による支出が大幅に増加しています。
これは2015年に本社移転があったため、移転にかかった費用となっています。
続いて財務キャッシュフローですが、上場による株式発行の収入となっています。
最後にフリーキャッシュフローを見てみましょう。
フリーキャッシュフローは直近では4億1565万円となっています。
直近の時価総額は106億9200万円、現預金14億2287万円を考慮すると、実質的な評価額は92億6913万円と計算できます。
年間で4億3379万円の営業キャッシュフローを生んでいるので、その21.4倍の評価額がついていることになります。
最後にリンクバルの成長戦略について調べてみましょう。
日本国内で、20歳から45歳までの交際相手のいない未婚者数はおよそ1,000万人ほど。
その中で、街コンジャパンの登録数は100万人。
すでにかなり大きいものの、まだ大きな伸び代があるといえます。
リンクバルではこの潜在ニーズ獲得に向けて「イベントカテゴリー」、「開催エリア」、「イベント掲載数」と3つの切り口での拡大を考えています。
イベントカテゴリーの拡大として、大手企業とのコラボレーションイベント、旅行をテーマにしたイベント、アート鑑賞イベントなど、多彩なイベントで参加者の幅を広げようとしています。
また、イベント掲載企業へのサポート強化し、開催エリア・イベント掲載数の拡大をはかっています。
人と人を繋ぐリンクバルの街コンジャパン。
交際相手を持たない未婚者が増加する中で、いかにしてユーザーを増やしていくのか。
今後もリンクバルの動向をチェックしていきたいと思います。