20代向け転職サイト『Re就活』で躍進「学情」の業績が改善中
学情

人材業界の老舗「学情」の業績が大きく改善している。

2023年10月期上半期の売上高は32.2億円(前年比49%増)、営業利益が4.5億円(前年同期は赤字)。通期売上予想は84.5億円(同25%増)と、コロナ前を上回って過去最高を更新する見込みだ。

一般的にはあまり知名度が高くないようにも感じられる学情だが、創業は1976年。1981年より新卒採用領域に進出し、ユニークな地位を築いてきた。

同社は「合同企業説明会(1984年)」「インターネット就職情報サイト(1995年)」「20代専門の転職サイト(2004年)」と、大きく三つの「業界初」を生み出してきた。

少子高齢化が進む日本において、若くて優秀な人材が希少なのは言うまでもない。中期経営計画では2026年10月期に売上高120億円を目指すという学情。改めてどんな会社なのか、開示された資料をもとにまとめる。

創業以来、人材業界で「三つの業界初」を創出

学情を創業したのは1948年生まれの中井清和氏。1976年に総合広告代理業を起業し、翌年に(株)実鷹企画を設立。1981年に「学生就職情報センター」部門を新設し、就職情報誌「学生就職ガイド」を刊行した。

当時の新卒採用は、情報誌に求人を情報されたら企業側は待つのが基本。しかし、これでは大手企業ばかりに応募が集まり、普通の企業には採用チャンスが少ない。

そこで発案したのが、今では当たり前になった「合同企業説明会」である。「学生が来ないなら、企業側が出向いてくればいい」というわけだ。こうして1984年に業界初となる合同企業セミナー「就職博」を開催。

1995年には現在の中核事業の一つ「あさがくナビ」の前身となるインターネット就職情報サイト『G-WAVE』(業界初)をスタート。2000年には社名を「学情」に変え、2002年にJASDAQ上場。2004年には業界初となる「20代専門」の転職サイト『Re就活』の運営を始めた。

2010年代の後半には売上高と利益水準が大きく拡大し、株式市場での評価も飛躍的に高めた。ところがその後は横ばいの推移が続き、2021年には創業者である中井清和氏が退任(現在は会長)。

新たに社長となったのは、取締役副社長を務めていた息子の中井大志氏。最高意思決定機関の若返りを図り、執行スピード、経営体制を一層強化すると表明していた。

『あさがくナビ』『Re就活』がコロナ後を支える

2020年のコロナ禍では、特に『就職博』の売り上げが落ち込んだ。多くの人が集まるリアルイベントなのだから当然だ。2〜3月は通常通り開催して他社中止に伴う乗り換え需要を獲得したが、4〜5月は全て中止または延期。

ただし、一部は『あさがくナビ』への転換に成功し、売上規模を一段増やした。『Re就活』に関しても浮き沈みはあるが、概ね拡大傾向だ。

『あさがくナビ』(朝日学情ナビ)は、名前の通り朝日新聞社とともにコンテンツを提供するのが特徴。学情は2013年に朝日新聞社および朝日学生新聞社と資本業務提携を結んでいる。昨年10月末時点での株主構成でも、それぞれ5.59%ずつの持分を握る。

Re就活』は先述した通り「20代専門就活サイト」を標榜し、第二新卒に特化した転職サイトとして企業および求職者を集める。イベントの開催にも積極的で、『転職博』は20代の来場者数で日本一であるという。

2017年には『Re就活』のフルリニューアルを実施し、そこからの5年で会員数が100万人拡大、200万人を突破した。2018年からはテレビCMを開始し、直近でも6月26日よりCMのオンエアを始めている。あわせて、YouTubeやInstagramの広告も強化する。

2023年5月には『Re就活テック』もローンチし、20代のITエンジニア経験者に特化した転職・採用サイトとして訴求。企業がITエンジニアを直接ヘッドハンティングできるという。

学情は『Re就活』を20代全体をカバーできるブランドとして訴求し、若手採用におけるシェアを拡大しようとしている。求人情報は営業系、事務系、サービス販売系、IT系、技術系までを網羅した。

「20代通年採用」が今後の標準に?

若手人材の採用環境も目まぐるしい変化が続いている。経験者採用(中途)の拡大と新卒採用の早期化・難化により、「20代通年採用」を実施する増える見通しだという。

日本経済新聞社の「採用計画調査」(2023年)によれば、企業の採用計画に占める経験者採用の比率は37.6%。これは過去最高の数値で、2016年と比べて二倍に上昇した。

そして経験者と言っても、なるべく若い人をとりたいというのが企業側の本音であることは少なくない。こちらは学情の調査だが、63.5%の企業が「20代」を特に採用したいと回答したという。

求職者側の姿勢も変わってきた。VUCA(Volatility, uncertainty, complexity and ambiguity)の時代と言われる今、働き手自身も主体的にキャリアを形成していくことへの関心が高まっている。

若手人材が望むキャリアの要素には、一定の傾向がある。「スキルを身につけ成長したい」「年功序列でなく実績を評価されたい」「転職で生きる仕事がしたい」「効率よく働きたい」といったものだ。

歳を重ねれば年功序列のありがたさを感じる人もいるだろうが、20代の若者にとってそれは遠い先の未来。求職者がそう思っている以上、求人側である企業も合わせざるをえない。こうして日本の労働環境もより流動性を増していくのかもしれない。

2027年10月期に売上120億円を目指す

学情にとって、若者世代の人材流動性の向上は好ましい変化だ。

重要なのは、ミレニアル世代、Z世代と呼ばれる若手層の情報収集スタイルに合わせた「面」を掴んでいくこと。そんな中、2020年より運営を本格化したのが「職場体験型」採用動画サービス『JobTube』だ。

YouTubeチャンネルの登録者数は633人と、今のところはメディアとして成立しているとは言い難い。

もっとも、動画に関してはコンテンツがあること自体が重要で、チャンネル登録者を集める必要は別にないのかもしれない。リリース以降、JobTubeシリーズの導入企業数は1,200社を超える。高品質な動画を一つ作っておけば、母集団形成から志望意欲の醸成、選考移行率の向上など様々な側面に効果が期待される。

学情は2020年以降、20を超える新サービスを次々と展開してきた。多くはリアルでの活動が制限される中、デジタルを活用したソリューションを提案するものだ。

『Web就職博』も2020年6月から2023年5月までに34回を開催。参画社数は1,110社、視聴者数は18.8万人を超えた。小規模イベントとして開催する『転職サポートmeeting』『就活サポートmeeting』は、4月末までに1,238回も開催した。

学情は、今後より成長の見込まれる首都圏マーケットを中心に戦力を拡大、5年後に全社400名を超える体制を築くという。『Re就活』『あさがくナビ』『就職博』それぞれ拡大し、2026年10月期の売上目標は120億円。経常利益で33.2億円を目指す。

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